結論: XLRから3.5mmへの変換アダプターは電気的には単純ですが、内容は中立ではありません。ピン2を先端、ピン1と3をグラウンドに落とすため、バランス伝送が失われ、レベルは約6dB下がります。ファントム電源48Vが入ったまま変換すると、接続先の機器を破損する恐れがあります。マイクを長距離引くならDIボックスが必要です。
変換アダプターは数百円で買え、引き出しに必ず1本は入っています。だからこそ誤用され、原因究明が一番遠回りになる部品でもあります。
アダプターの中で何が繋がるか
3極を2極に落とす
XLRはピン1がグラウンド、ピン2が正相、ピン3が逆相です。3.5mmのTRSは先端、リング、軸があります。アダプターはピン2を先端に、ピン1と3を軸に接続します。逆相が接地されるため、バランス伝送はここで終わります。
6dBの損失
片側の信号だけを使うため、電圧は半分になり約6dB下がります。ラインレベルなら入力側のゲインで補えますが、マイクでは致命的です。ゲインを上げるとノイズも同じだけ上がるため、2mVの出力が1mVになり、ノイズとの比が悪化します。ゲインを上げてもノイズも同じだけ上がるため、失った6dBを戻すには増幅以外の手段が必要になります。
アダプター・ケーブル・DIの比較
| 手段 | 伝送 | レベル | 用途 |
|---|
| XLR→6.3mm TRS | バランス可 | 変化なし | ミキサー、ライン |
| XLR→6.3mm TS | アンバランス | -6dB | 楽器、短距離 |
| XLR→3.5mm | アンバランス | -6dB | カメラ、携帯 |
| DIボックス | バランス | インピーダンス変換 | 舞台、長距離 |
DIボックスだけがレベルとインピーダンスを適正化します。アダプターより高価ですが、ハム音と高域劣化を防ぎ、結果的に音が良くなります。
ファントム電源の危険
48Vが信号線に乗る
ファントム電源はピン2と3に同相で48Vを印加し、バランス入力側で打ち消します。ピン3を接地するアダプターでは、その半分が信号線に現れます。アンバランス入力に繋ぐと、入力段が破損することがあります。
抜き差しの順序
ファントムを切ってから変換し、接続後に再度入れます。常設では、ファントムのオンオフができるチャンネルを使うのが安全です。
アダプターで足りる場面
2m以内でラインレベルの信号なら、アダプターで実用上問題ありません。キーボードをアンプへ、ミキサーをカメラへ、といった用途では利便性が理論より優先されます。問題になるのはマイクで、小さな信号がノイズを拾いやすくなります。プラグの構造はTRSとTSの違い、伝送方式はバランスとアンバランスの違い、ケーブル選びはXLRマイクケーブルのガイドを参照してください。
実用例
- キーボードをアンプへ: XLRから6.3mm TRSへ1mで接続し、レベルはアンプ側で調整します。
- マイクをカメラへ: ファントムを切ってから挿し、可能ならDIかカメラ用インターフェースを挟みます。
- ミキサーからアクティブスピーカー: XLR同士で繋ぎ、変換は使いません。
- 2本のマイクでポッドキャスト: XLR入力2系統のインターフェースを使い、アダプターは避けます。
よくある質問
ファントムで機器が壊れますか
バランス入力なら問題ありませんが、アンバランスの変換アダプター経由では危険です。切ってから抜き差しし、必要なら絶縁トランス入りのアダプターを選びます。
音が小さくなりました
逆相側が接地され、電圧が半分になったためです。約6dBの低下で、入力側で補うかDIボックスを使います。
マイクを直接スマートフォンに繋げますか
アダプターだけでは実用的な音になりません。スマートフォンはヘッドセットのレベルを想定しています。プリアンプ内蔵のインターフェースか、カメラ用アダプターを使ってください。